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ココビズ2017.8.28

超立体空間 VRプロジェクションマッピング『傷物語VR』がPlayStation™Storeにて無料配信

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劇場版全三部作『傷物語』の完結編Blu-ray/DVDの発売を記念し、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(以下、SIEJA)、面白法人カヤック(以下、カヤック)、アニプレックス(以下、ANX)の3社が共同開発した、PlayStation®VR(以下、PS VR)向けコンテンツ『傷物語VR』(以下、『傷物語VR』)の無料配信が、PlayStation™Store(以下、PS Store)にて7月12日よりスタートしました。そこで、『傷物語VR』の詳細をお伝えするとともに、その見どころや最大の特徴である”超立体空間 VRプロジェクションマッピング”について、SIEJA 制作技術者 秋山賢成さん、カヤック 企画部・人事部 天野清之さん、ANX 企画制作グループ企画制作部1課 プロデューサー 淀明子さんにお話を聞きました。
360度動画とアプローチの異なる「VRプロジェクションマッピング」の挑戦

劇場版全三部作『傷物語』は、西尾維新による大ヒット原作小説『〈物語〉シリーズ』の一作品『傷物語』を「Ⅰ鉄血篇」、「Ⅱ熱血篇」、「Ⅲ冷血篇」の全三部作としてANXが映像化。2016年から2017年にかけて公開され、大きな話題を呼びました。 その完結編にあたる「Ⅲ冷血篇」のBlu-ray/DVD発売を記念し、伝説の吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(以下、キスショット)とともに劇場版『傷物語』三部作の名シーンを振り返ることができる、PS VR向けのオリジナルコンテンツ『傷物語VR』を制作。2017年5月、抽選で選ばれた約80名を対象に先行体験会を開催し、7月12日からはPS Storeで同コンテンツの無料配信がスタート。製品化にあたり、キスショットとのコミュニケーション機能を強化し、さらに臨場感を高めるといったバージョンアップが施されています。

『傷物語VR』のコンセプトは“超立体空間 VRプロジェクションマッピング”。VRの映像コンテンツと言えば全天球カメラで撮影する360度動画が一般的ですが、今回のコンテンツはまったく異なるアプローチで制作され、VR空間に再現された建物、壁、水たまりなどにアニメの名場面が映し出されるなど、かつてない映像体験を味わえるのが特徴です。
作品世界に入り込んだかのような演出内容を体感

VRヘッドセットを装着すると、そこは学習塾の教室。右側から声がするので視線を向けると、すぐ隣にキスショットが座っています。

PlayStation®Move モーションコントローラー(以下、PS Move)で彼女の頭をなでたり、あらゆる角度から覗き込んだりすることも可能

キスショットに促されるままリモコンに見立てたPS Moveを操作すると、正面の黒板が巨大スクリーンに変化。体験者とキスショットはふたり並んで映画を観ることに。とはいえ、映画館のように前面に映し出された映像を楽しむだけにはとどまらず、やがてスクリーンが上下左右にも広がり、飛び散るガラス、水たまり、霧のスクリーンにも映像が照射されるという、まさに”超立体空間 VRプロジェクションマッピング”のコンセプトを体感することができます。 



さらに、雨のシーンではキスショットが傘をさしかけてくれたり、ヴァンパイアハンターのキャラクター エピソードが投げた巨大な十字架が体験者めがけて飛んでくるなどインタラクティブ性があり、体験者の没入感も高まります。



また体験者のいる場所も、教室から雨の校庭、CG空間へと移り変わり、作品世界に自らが入り込んだかのような感覚を味わうことができます。



約7分のVR映像体験後、VRヘッドセットを外す時の満足感、充実感はひとしお。一度視聴しただけでは見落としてしまった演出もありそうで、つい何度も映像世界に入り込みたくなる作品となりました。

【体験者の感想】
先行体験会で同コンテンツを体験した方々から、感嘆と賞賛の声が送られました。


「PS VRで映像作品を視聴した経験はありますが、ダイナミックに映像が変化するのが斬新でした。映し出されるのは2Dアニメ映像ですが、投影される面が上下左右にあるため深い没入感を味わえます。エピソードの十字架が飛んでくるシーンは、『まさか自分のほうに来るとは!』と驚きました」(20代・男性)

「PS VRを体験するのはこれが初めて。かつて3D映画を観た時には物足りなさを感じましたが、VRは怖いぐらいリアルで圧倒されました。キスショットが傘をさしかけてくれるシーンは、動きが自然で目の前に本物がいるのかと思ったほど。『ここまで滑らかに動くのか!』と感動しました。劇場版全三部作『傷物語』はすべて観ていますが、全編この演出で観るのも楽しそう。PS VRが欲しくなりました」(40代・男性)

「『VRプロジェクションマッピングってどういうことだろう』と疑問に思っていましたが、観れば納得。キスショットがすぐそばにいますし、水たまりや建物に映像が映し出されるのが斬新でした。いちばん好きだったのは、建物の中を走っていくシーン。建物の映像が後ろに流れていくので、まるで自分が動いているように感じられ、思わず声をあげてしまいました。劇場版全三部作『傷物語』はすべて観ていますし、PS VRも持っていますが、今までにない新鮮さを味わえました。今後こういうタイトルが増えてくれると、本当にうれしいです」(20代・男性)
『傷物語VR』を共同開発した3社のスタッフにインタビュー
 
SIEJA 制作技術責任者 秋山賢成さんのお話




――『傷物語VR』は、VRとプロジェクションマッピングを融合させたユニークなコンテンツです。制作の経緯についてお聞かせください。

秋山:発案はSIEJAで、360度動画以外の方法で没入感のあるVRコンテンツを作れないかと考えたのが発端です。そこでカヤックさんに、「一緒に作りませんか」と相談を持ち掛けました。その後、エフェクトやシェーダーをカヤックさんが開発してくださり、僕らはPlayStation®というプラットフォームに最適化するお手伝いをさせていただきました。そのシステムで、ANXの『傷物語』の世界を表現しました。 VR機器で視聴する360度動画は、特殊なカメラで撮影する必要があります。つまりVRコンテンツを作るには、新たに素材を撮影しなければならないのです。しかし、映像関係各社は、映画館やテレビで視聴するための2D映像をすでにたくさんお持ちです。その資産を使い、PS VRで面白いことができないか、360度動画ではない新しい体験を創出できないかと考えたのが今回の企画です。映画館やテレビでは、目の前にしかスクリーンがありません。でも、VRなら左右両方にスクリーンを置いてもいいし、映像を歪ませたり、破片に飛び散らせたりすることも可能です。作品世界に入り込んで映像を楽しむことができますし、なおかつその世界が変化するインタラクティブ性もあります。そこに、すでにある映像素材を活かし、VR映像に仕立てることによって、さらにIPの価値を高めることができたと感じています。

――VRで新たな体験を提供できるうえ、開発期間やコストを抑えるという効果もありそうですね。
秋山:今回はすでにベースとなるシステムができていたので、非常に短期間で制作できました。

――3Dオーディオを利用した音響も、没入感を深めている要因では。
秋山:例えば雨のシーンなら、上から雨が降ってくる音、下からピチャピチャと水が跳ねる音が聞こえるようにしていたり、キャラクターのいる方向から声が聞こえるようにしているので、声により視線を誘導することもできます。映像を“観る”のではなく、“体験する”感覚を味わっていただけるのではないでしょうか。

――演出面での見どころをお聞かせください。
秋山:現実を模倣するのではなく、VR空間ならではの映像演出にこだわりました。水たまりに映像を投射するなんて、現実にはあり得ないことですよね。でも、その雨のシーンで水たまりに映像が映るだけで、没入感が深まるんです。 

プロジェクションマッピングは、東京駅の壁面に映像を映し出すなど、元からある地形に対して映像を投射するのが面白いところです。でも、今回のコンテンツは東京駅のような実在するものではなく、CGに映像を投射してプロジェクションマッピングをするからこそ、現実よりもさらに面白い体験ができるんです。「ポリゴンに映像を張っているだけでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一度ご覧になれば違いがわかるはずです。

――完成した『傷物語VR』に対するご感想をお聞かせください。

秋山:想像以上のものができたというのが率直な感想です。VRは、うまく表現できれば100倍面白くなりますが、失敗すると100倍つまらなくなります。頭の中では「こうなったら面白いよね」という構想はありましたが、やっぱり作ってみないとわからないのも事実。今回は非常にうまくいったと思います。

――今回は『傷物語』とのコラボでしたが、他のコンテンツと掛け合わせることもできそうです。
秋山:そうですね。実写のアーティスト映像を使うことも十分考えられます。ライブは光で演出しますが、VRの世界なら機材の制約もないため、より自由度の高い見せ方ができます。現実ではできないような演出も、VR空間ならできてしまうので、今までにない斬新なミュージックビデオも作れるのではないかと思います。

カヤック 企画部・人事部 天野清之さんのお話



――『傷物語VR』のベースになる技術開発は天野さんが担っているそうですが、天野さんのご経歴、今回実現したかったことなどをお聞かせください。

天野:私は元々、CGや映像を制作していましたが、Flash全盛期に「プログラムを覚えると面白いインタラクションを作れる」と気づいたんです。僕にできるのは、プログラムを用いて映像や展示を効果的に見せること。デザイナーとプログラマーの経験を活かし、現在はディレクターとしてさまざまな映像、展示を手がけています。 そんな中、秋山さんとお会いする機会があり、「360度動画ではない新しいVR映像視聴体験を作ろう」という話に。これまでにもインタラクション展示やギミックを使った映像を制作してきたので、その経験に基づき、VRで面白いことができればと思って、引き受けることにしました。 僕はアニメ制作会社シャフトの40周年イベント「MADOGATARI展」で西尾維新さんのブースを担当したのですが、そこでもモニタを使った展示をディレクションしました。そういった展示空間をVRに応用すると面白いものができるのではないかと思い、今回のシステムを開発しました。

――どのように映像プランを考えていきましたか。
天野:『傷物語VR』は、二部構成になっています。ひとつは、展示空間で感じられる音、雰囲気、距離感をVRで再現しているところ。もうひとつは、VR空間でなければ表現できない映像演出、空間演出を作ることです。 VR空間でなければ表現できない映像を先に見せてしまうと、突飛すぎてユーザーがついていけません。そのため、まずキスショットと並んで座っているというシチュエーションを作り、目の前に映像を投射しました。それにより「あ、僕は今この子と一緒に映像を観ているんだ」とスムーズに理解できるんです。 その映像から、いきなり雨の空間になり、水たまりに映像が映る。キスショットが傘をさしかけて視線を誘導する。最後は霧のシチュエーションに合わせてミストスクリーンに映像を映し、最後はCGでできた光の空間に飛ばす。ここまで来ると体験者は映像を観ているという意識がなくなるぐらい、映像世界に没入しているはずです。 つまり、最初はわかりやすく矩形のスクリーンに映像を投射していますが、最終的にはCGだけの世界になっているんです。こうしたプロセスを段階的に踏み、しかもそれを意識させずに演出として取り入れることで、圧倒的な没入感を味わっていただけます。

――それを約7分でシームレスに体験できるのが素晴らしいですね。苦労したポイントは?
天野:一般的な映像とは違う、独特の作り方をしています。ひとつのVR映像ではありますが、その中にはキスショットのシーン、劇場版のアニメ動画、周囲の空間演出と3つのシチュエーションが存在しています。映像コンテを作る際にも、キスショット、動画、空間と3ラインで考えなければなりません。これまでに手がけた展示で映像と展示空間の2ラインを考えることはありましたが、3ラインは初めての経験でした。その点で苦労しました。

――複雑な構成ですが、天野さんの中では当初から完成形が見えていたのでしょうか。
天野:四苦八苦しながら「ここは入れよう」「ここは抜こう」と足し引きしていきました。ただ「VRプロジェクションマッピング」という明確なコンセプトがあったので、そこに則したものを作ろうと調整を進めていきました。

――映像的な面白さもありますが、作品のファンが喜ぶツボを押さえた演出も取り入れられています。天野さんの作品愛によるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。
天野:元々僕は、アニメ、アーティスト、小説家のコンテンツを仕事の軸にしており、西尾維新さんの作品のように作家性の強い作品に携わる機会が多いのですが、なにより僕自身、西尾維新さんの作品、シャフトさんの作品、ANXのコンテンツが大好きなんです。 西尾維新さんの作品は、言葉の言い回し、キャラクター、構成もとても面白く、自分自身がものを作るうえでも、多分に影響を受けています。西尾維新さんやシャフトさんとお仕事をする時には、どうすれば自分が影響を受けたものをより多くの人に伝えられるか、どうすればもっと面白いと感じていただけるかを意識しています。

――今回『傷物語VR』を共同開発したことで、VRの新たな可能性も見えてきましたか?
天野:今回は、コンセプトに則しながら自分の展示経験に基づいて開発を行いましたが、3ラインの動画コンテの描き方を編み出したことで見えてきた表現方法もあるので、今後さらに挑戦していきたいです。また、CG空間、キャラクターコミュニケーション、VR上の空間演出をノンゲームというジャンルで見せる方法もあると実感できたので、今後はその領域にも挑戦したいです。インタラクションではあるけれどゲームではない、新しい映像表現を作り出していきたいです。

ANX 企画制作グループ 企画制作部1課 淀 明子さんのお話



――ANXが今回のプロジェクトに参加することになった経緯をお聞かせください。

:カヤックの天野さんとは、以前『〈物語〉シリーズ』の仕事でご一緒していました。そんな中、新たなVR映像表現を企画していると伺い、「『傷物語』で作ってはいかがでしょう」とご提案したんです。劇場版全三部作『傷物語』は建物などが3DCGで作られているため、制作会社シャフトさんからデータをお借りすればVR映像の素材になるのではないかと思いました。

――アニメの3DCGデータをそのままVR映像に使ったのでしょうか。
:いいえ。アニメのCGがあるとはいえ、そのまま使うことはできません。お渡しした素材をもとに、天野さんに一から作っていただきました。

――天野さんが中心になってディレクションされたのでしょうか。
:そうですね。内容に関しては、天野さんにご提案いただきました。事前にコンテをいただき、原作者の西尾維新先生にもチェックしていただいています。天野さんは「MADOGATARI展」の西尾先生のブースもディレクションされていて、そこでもたくさんのモニタを壁面に設置したり、三面に大きいスクリーンを置いたりという展示をされていました。現実の世界でやられていた展示を、VRの世界に置き換えてくださったというイメージです。その結果、天野さんのディレクションを活かしたVR作品になったと思います。そもそも天野さんは『〈物語〉シリーズ』がお好きで、造形も深いため、ファンの心をくすぐるような演出も随所に入っています。

――完成した『傷物語VR』をご覧になった感想は?
:ものすごく感動しました! これまでにいろいろなVR映像を体験しましたが、没入感が際立っていました。作品によっては、体験中にスッと冷静になってしまうものもありますが、これは『傷物語』の世界にスムーズに入れます。キスショットが話しかけてくれたり、急に影の中に消えたりする演出もあり、とても練り込まれた作品だと思いました。

――コンテンツホルダーとして、どのように開発・監修をされたのでしょうか。
:開発中もバージョンごとに何段階かでチェックしましたが、技術のことはわからないながらも都度、天野さんに感想をお伝えしました。その意見をくみ取り、次のバージョンでは演出のクオリティをさらに上げてくださりました。例えば雨天のシーンは最初、キスショットと体験者が一緒に雨に濡れていたんですが、「濡れるとかわいそうですね」と何気なく話したところ、次のバージョンではキスショットにオリジナルにはないレインコートを着せて、体験者に傘をさしかける演出を加えていたので感激しました。 また、キスショットのセリフは、すべて声優の坂本真綾さんによる新録です。セリフは天野さんが考えて、西尾維新さんに監修をしていただきました。「すごいのう」と最初にリアクションをするところも含め、体験者がスムーズに没入できる演出になっているのが天野さんのお力です。 場面の切り替えに関しても、秋山さんと天野さんがふたりで細かくチェックしています。どうすれば実際よりも体験時間を長く感じさせ、体験者に満足していただけるか、冷静になってしまうシーンをいかになくすか。秒単位で映像を調整した結果が、この素晴らしいクオリティにつながったのだと思います。

――今後、いろいろなコンテンツに活用しそうな映像技術ですね。
:VRヘッドセットの中に、映画館ができたようですよね。キャラクターと一緒に映像を観るという体験も面白く、『傷物語』以外のコンテンツにも活用できそうです。

“PlayStation”は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
 
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