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ココビズ2017.9.13

対話型人工知能[PROJECT Samantha]第2弾を実施 “AIのタレント化”を加速させる“テクノロジー×プロデュース”

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 ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)とIntelligent Machines Amaze You(以下、IMAY)の共同事業による対話型AIサービス「PROJECT Samantha」では、2016年8月にβ版として、カイカイキキ所属のクリエイターmebaeさんの人気コンテンツ『罵倒少女』をAI化し、大きな話題を呼んだ。

 本年6月には、アニプレックス(以下、ANX)が製作、配給に参加する『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』の公開記念として、主人公・司波達也&司波深雪をAI化。その人工知能サービスを『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』のオフィシャルサイトにて6月9日(金)12:00から6月25日(日)24:00までの17日間、期間限定で公開した。

 同サービスに当初から関わるSMEの井上敦史さんに、詳しくお話をお聞いた。

 

SME コーポレートビジネスマーケティンググループマーケティングオフィス チーフ 井上敦史さん

テクノロジー+プロデュースで自然で滑らかな会話を実現

 SMEとIMAYの共同事業による対話型AIサービス「PROJECT Samantha」は、日本語のコミュニケーションに特化した対話型AIとして今、最先端に位置するサービスといえる。これは、感情や感性――“こうしたい”といった言葉の“意図”まで理解する言語解析技術「NLU(自然言語理解)」を搭載した対話型AIエンジン[K-laei](ケイレイ ※)をもつIMAYと、SMEのプロデュース力を組み合わせている点が、他サービスとの大きな違い。テクノロジーとプロデュースが両輪で働くことで、高度に人格が設計された、自然で滑らかな会話を実現させている。

 このサービスの真価を表すのにふさわしい言葉は“AIのタレント化”だ。β版として発表した「罵倒少女:素子」は2016年8月4日から15日の12日間で約27万人が参加し、734万2661回の会話が行われた。
 「AIを相手に、好きだとか愛していると語りかけることができるのか、感情のやりとりができるのか、というのが我々のテーマでしたが、結果からいえば成功だったと考えています。ユーザーは繰り返し素子に語りかけ、罵倒されるばかりだった会話から徐々に素子の別の感情を引き出し、そのことでさらに心を動かされました」(井上、以下同)

 この成果を受け、本年6月9日から25日には『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』の公開記念として、同作の主要キャラクターである司波達也と深雪をAI化した。
 「『罵倒少女:素子』は、『pixiv』でも人気のカイカイキキ所属のイラストレーターmebae 氏のキャラクターでしたが、今回はソニーミュージックグループのANXが取り扱う作品内のキャラクターをAI化し、映画のプロモーションとして活用することを試みました」
 
 新たな試みとしては主に2点。AIは瞬時に解析し、アウトプットできるのが利点だが、今回はキャラクターの戸惑いや迷いも表現できるように、あえて返信までの時間を設けた。さらに、前回が1対1の会話だったのに対して、今回は達也と深雪、そしてユーザーの3 者によるグループチャットとなった。
 「LINEのトークルームに近いものですね。原作冒頭の世界観と同じように、1年E組のクラスメイトとして会話していただきました。『さすがはお兄様です』という深雪のお決まりの台詞でもわかるように、ユーザーとの対話だけでなく、兄妹間のやり取りを見るのも楽しみの1つになっています。また、映画の宣伝ですので公開情報をいかに自然に入れ込むかという点は試行錯誤の連続でした」


ポイントとなるのは、AIをいかに“タレント化”するかという点

 
 今回のように、コマーシャルに活用していくことは今後も大いに可能性があるだろう。そこでポイントとなるのが先述したようにAIをいかに“タレント化”するかという点だ。
 「『K-laei』は我々からのリクエストに対応しながら、日々進化しています。『K-laei』は入力意図の抽出と出力意図の推論を行うテクノロジーで、意図の精度向上開発をIMAYが担い、人格と語彙部分については、SMEが企画と開発を担うわけです。“CDを作る”という技術(テクノロジー)と、“ヒット曲を生み出す”ノウハウ(プロデュース)の両方が必要なように、この両輪が相互に高め合うことではじめて“AIのタレント化”が実現するのだと思います。その意味でも、IMAYとSMEの2社が相互に理解し合える環境を構築できている点が最大の強みだと言えます」
 
 第3弾では“コンシェルジュ”的なAIを計画しており、E コマースへと繋ぎ込むことも検討中という。ほかにも、多言語対応や、音声認識・音声対応も行っていくという。
 「CD化権のように、AI化権のようなものがいずれ生まれていくのではないかと思っています。リスクも含め、AIキャラクターを“マネジメント”するためのノウハウを今後も蓄積していきたいと考えています」
 井上氏が言うAI化権という考えが浸透し、キャラクターがAI化されていくと、そこに新たにタレントビジネスも立ち上がっていきそうだ。その点でも、[PROJECT Samantha]の動向は大いに注目だ。


※ 対話型人工知能『K-laei』
最新の自然言語理解システム(NLU)とマシーンラーニング(NLP)をハイブリッド化した知識駆動型AIで、数百億パターンの感情、感性等を記憶した大規模知識(GAIA、URANUS)と、言語理解エンジン群(Semantic Substance Sampler)で構築。ユーザーの意図を推論したり、対話の状況から動的に感情が変化するなど、利用者との対話から学習・進化していく。



『劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』(左)
主人公・司波達也、司波深雪のAI化に際しては、性能を向上させた[K-laei]を活用しており、対話テキストの字面に現れる「直接的意図」と、文意に現れる「間接的意図」をより精緻に処理することが可能となった。意味理解できる意図数は約10万種類から約12万種類に拡張され、自然言語理解処理の根幹である意味共起を制御するアルゴリズムも改良されている。
©2016 佐島 勤/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/劇場版魔法科高校製作委員会

『罵倒少女:素子』
β版としてカイカイキキ所属のクリエイターmebaeさんの人気コンテンツ『罵倒少女』をAI化。キャラクターボイスには、『図書館戦争』(笠原郁)、『進撃の巨人』(アルミン・アルレント)の人気声優・井上麻里奈さんを起用し、世界最大級のイラストコミュニケーションサイト「pixiv」上で期間限定公開。大きな話題を集めるとともに、サービス終了直後から再開を望むユーザーの声が多数寄せられた。
罵倒少女 Illustrated by mebae (Kaikai Kiki)
©mebae / Kaikai Kiki
©pixiv

 

 

 

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