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ココレポ2017.10.30

角松敏生が音楽業界のリアルを語り、実力派作家4組は生コンペバトルを披露! 『SONIC ACADEMY FES EX 2017』初日レポート

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“エンタテインメントの学びの祭典”、『SONIC ACADEMY FES EX 2017(ソニックアカデミー フェス エクストリーム 2017)』が10月7日(土)、8日(日)に南青山のFuture SEVENにて開催され、2日間全8講座に延べ900人が受講した。

この“講座フェス”の特長は、音楽制作の現場でリアルに行なわれているプロの仕事を学べる点にある。これまでは、スタジオなどの限られた場所でのみ継承されてきた音楽制作のノウハウや作法、思考法や技術を、現役のアーティストやクリエイター自身が語るため、制作の現場を肌で感じることができる。

そのため、クリエイター志望の人からプロの楽器プレイヤーを目指す人まで、さまざまな受講生たちで、毎講座、ほぼ満席の盛況となった。

本講座フェスについて、初日の10月7日に開催された4講座から、新進気鋭の作家・Akira Sunset、Carlos K.、丸谷マナブ、二人組ユニットのSoulifeら4組による講座と、今年デビュー36年目となるシンガーソングライター 角松敏生による特別講座の模様をレポートする。



◆J-POPクリエイター頂上決戦!
楽曲コンペ・バトルロワイヤル2017
新進気鋭の若手作家4人が集結し、勝負曲でガチ対決!

講師:Akira Sunset、Carlos K.、丸谷マナブ、Soulife


この講座では、AKBグループやLittle Glee Monster(以下、リトグリ)をはじめ、J-POPシーンで活躍するアーティストたちへ楽曲を提供したりプロデュースを行なう若手作家4組が集結。

*左から、Akira Sunset、Carlos K.、丸谷マナブ、Soulife 


リトグリのA&Rを担当するソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)の灰野一平が、来年予定しているリトグリの3rdアルバム制作に向けて、そのリード曲を募集すべく、実際のコンペシートを作成。それをもとに作家4組が事前に楽曲を制作し、この講座でプレゼンするという、超実践的な内容になった。

◆求める曲調・キーワード  *今回のコンペシートはこちら
・ドラマや映画、アニメのオープニングテーマになりうる、ミドルテンポ以上のわくわく感が演出できる楽曲
・青春映画のエンディングに合いそうな、爽やかさと甘酸っぱい要素の入った楽曲
・ハーモニーが生かせる楽曲
・ライブでも盛り上がれる楽曲(分かりやすく手を上げられる、シンガロングできる、など)
・印象的なイントロを持つ楽曲
・リトグリの特徴を生かせるバラード楽曲
・いさぎよく音数を減らしてシンプルなオケとコーラスワークで持っていけるリズミック な楽曲

ポイントはこれまで中高生だった彼女たちも高校を卒業したり、来年20歳を迎えるメンバーもいて、少しずつ大人になってきていること。そして、2ndアルバムから約1年を経て、満を持して制作する3rdアルバムであること、など。

これら周辺環境と上記に示された曲調やキーワードをどう楽曲に落とし込むのか? 受講生たちの期待感は“講座”というよりは、むしろ“リアリティショー”を観ているようだった。

◆Akira Sunsetのプレゼンテーション

最初のプレゼンはAkira Sunset。基本的にトラックは別の人が担当し、コードとソメロディをトラックメイカーに渡して完成させていくコライトスタイル。「その分、多く作ることができる」ということで、当日の朝9時まで粘って2曲を提出した。

「コンペシートの内容は基本的に無視」と語るAkira Sunsetは、「彼女たちは“歌うま”というキーワードで出てきたのですが、これまで歌に対する想いを歌ってこなかったように思う」と説明。

その上で、「今後のライブスケジュールを調べると、横浜アリーナでの開催があったので、この規模の会場でファンと一緒に歌って盛り上がれる曲、さらに彼女たちのステージという意味でもステップをひとつ上げられるようにしたい」と語るなど、コンペシートに書かれていない、今後の予定などもヒントに楽曲を仕上げたという。

これにはSMLの灰野も「次の予定まで理解した上で、彼女たちには何が必要なのか提案してくれるのはA&Rとしてとてもありがたい。コンペで常勝するには、こうした想像力が大切なのではないでしょうか」と評した。

◆Soulifeのプレゼンテーション

Soulifeは、河田総一郎(Vo&G)と佐々木 望(G&Cho)の2人から成る音楽ユニット。アーティストとしての活動歴もあり、近年は楽曲提供やアーティストのプロデュースでも活躍する。

リトグリメンバーが小学生や中学生の頃からの付き合いという彼らがコンペシートの内容で注目したのは、“ハーモニーが活かせる楽曲”と“リトグリの特徴を活かせるバラード楽曲”。この2点を軸に「彼女たちが今歌うのには何が良いのか?」を考えていったという。

「これまでは“スクール”をキーワードにした楽曲が多かった。でも高校を卒業したメンバーもいるので、少し成長させたかった。今までは恋愛について突っ込んで表現をした楽曲がなかったので、今の彼女たちが歌える恋愛をテーマにした曲というのも意識しました。また、“和メロ”も少なかったので、そこも提案してみました」

これに対して灰野からは「アーティストは年齢によって歌えなくなる曲もある。どうやって年齢を重ねていくのかは、長く活動できるようになると出てくる課題でもある。アーティスト活動の源流にまで辿って提案してくれるのも彼らの特長だと思います」と語った。

◆Carlos K.のプレゼンテーション

「僕は欲張りなので、コンペシートに書かれている内容をすべて網羅したくなった」と語り、今回の『コンペ・バトルロワイヤル』でも、ギリギリまで粘って2曲を完成させ、この場に臨んだという。

「要素が多いほうが採用されやすいということも少し意識して、どちらの曲も転調し、1曲のなかにさまざま要素を詰め込みました。また、リトグリはコーラスワークが魅力ですが、今回はオケがわくわくする感じも大事にしました」

完成した曲を聴いた灰野は「コーラスを聴かせることを考えると、オケの要素は少なくするのが王道ですが、彼が作った曲はオケの要素が多いのに、コーラスの邪魔をしない。シングル曲らしい派手さもあった」と感想を述べた。

また、Carlos K.からは、「常に自分自身が面白いと思えることをやった方がいい」と受講者へアドバイスも送られた。

◆丸谷マナブのプレゼンテーション

最後に楽曲をプレゼンしたのは、昨年から今年にかけてリトグリのシングル曲を手がけ、彼女たちの代表曲のひとつでもある「好きだ」を作曲した丸谷マナブ。実は、「好きだ」も「SONIC ACADEMY」の講座から誕生したという。

「コンペシートの中では“アルバムのリード曲”という点だけに注目しました」という丸谷は、「20歳になったメンバーもおり、大人っぽさやリアル感を伝えたかった。また、彼女たちは、“オリンピックで歌うことが目標”と公言していますし、そこへ向けたスタートとなる曲、これからの彼女たちへの期待感が溢れたものにしたかった」と説明。

さらに「ライブの冒頭で会場内が暗転し、ハンドクラップ。ドラムが鳴り、そこからハーモニーが響き始める……、こんな登場感や、さらにはCMで15秒聴いてもキャッチーさを感じさせるものにした」と語る。

これまでリトグリの楽曲制作で何度も仕事をしている丸谷について、灰野は「コンサルタント」と評し、「A&Rが次はどういう方向性にすべきか、悩んでいる時に、“こういうのはどうですか”と示してくれる提案型の作家」と話した。


4組の作家がこれほどまでに力を入れて楽曲を制作し、さらにその背景や狙いまでじっくり聞く事ができたこの講座は、これからコンペに参加していくのであろう受講生にとても参考になったに違いない。

次の売れっ子作家がここから生まれることを大いに期待させる講座となった。

また、灰野が「これでアルバムは完成できそう」と手応えを語るなど、この日披露された楽曲はすべてが力作揃い。このなかから来年のリトグリの3rdアルバムに何曲が収録されるのか。さらには本当にリード曲に採用されているのか、今後も注目していきたい。


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講師:角松敏生

初日、最後の講座を務めたのが、今年デビュー36年目となった角松敏生。

冒頭では「人にモノを教えるようなガラじゃない」と語っていたが、「これから音楽業界を目指す人に向けて伝えていくことは大事なことですし、異業種の人が聞いても参考になるものにしたいと考えた」と語るなど、自身の経験を踏まえ、縦横無尽に業界の実情と、そこで生き抜いていくために必要な心構えが語られた


◆音楽業界のこれまでの流れと現状

講座は大きくわけて3~4部構成といった内容。冒頭は「音楽業界の流れ」について。

ここでは終戦直後の日本の音楽シーンから、歌謡界/興行界を中心に、いわゆる“芸能界”が形成されていく流れを、自身のデビュー前後からの活動も踏まえながら俯瞰して解説。デビュー当初の月給なども赤裸々に語られるなど、時には笑いも交えながら音楽業界について解説していった。

角松は「昨今ではテクノロジーの進化で誰でも音楽が制作でき、クオリティの高いレコーディングができるようになったため、CDなどの録音商品の価値が下がり、その結果、職業音楽家の価値も下がっている」と現状を考察し、「プロというものの敷居がどこにあるのか、プロとしての実感を得るにはどうしたら良いのかを考えていきたい」と語った。

◆アーティストと職人、そして音楽で収入を得る上で心得ておくべきこと

会が進行し、角松がデビュー当時に出会ったプロたちの話へ。ここで特に熱く語られたのが、“職人”たちの世界といえる「スタジオワーク」についてだ。

当時、エンジニアはもちろん、スタジオミュージシャンたちも、アーティスト以上に高給取りで、「1時間3万円で演奏してもらっていた。スタジオで一番偉い存在だった」と振り返る。

「スタジオミュージシャンの人たちはジャンルが何であれ、スタジオに入り、譜面をみたら最高のテイクを一発で録ってしまう。本当に凄かった。当然誰も教えてくれないから、僕はアシスタントエンジニアの人に後からそっと聞いて機材の使い方を覚えたり、スタジオミュージシャンのプレイを学びながら、一つひとつ覚えていった。ここで得た経験が後に、杏里さんのプロデュースで奏功したんです」(角松)


このように角松は自身の体験を踏まえ、「スタジオワークを知ることが重要」と強調。アーティストとして表舞台で表現していくだけでなく、「レオナルド・ダ・ヴィンチと絵の具職人、料理人と生産者のように、アーティストではなくアルチザン(職人)を目指すという生き方もある」と語り、「レコーディングでも、ライブ公演でも、そこに関わる人や仕事のすべてを認識しておくことが必要」とアドバイスを送った。

話はさらに深まり、音楽で得る収入についても語られた。「印税分配」「再販商品」「知的財産の考え方」「原盤について」「音楽出版社の仕事」「レコード会社とプロダクションの関係」など、長年音楽業界の最前線で活躍されてきた角松ならではの講義が続く。

さらに「事業者はアーティストがいてこその存在なのだから、より透明性を高め、風通しを良くするべき。一方でアーティストも事業者を頼りながら、彼らとは一蓮托生だということを強く理解しておく必要がある」とも語られた。

◆プロとして生きていくための心構え

そしていよいよ、本講座の核心であるプロとして生きていくための心構えへと話しが進む。

ここではまず、実際のレコーディングから、ボーカル録りを実演。受講者の男性に童謡「チューリップ」を歌唱してもらい、そこから、細かく音程を直していく作業工程を実演してみせて、「このように、いくらでも修正できるのが今の技術」と解説。その上で、イギリスのロックバンド イエスの逸話を披露する。


「当時のボーカル、ジョン・アンダーソンがボーカルレコーディングを終えて帰宅したあとに、残ったメンバーでコンピュータを使い、ボーカルをイメージ通りに修正した。

翌日、それを聴いたジョンは、“そう歌えばいいんだな”と言って、一発でそのとおりに歌ってみせた。かつてコンピュータというのは、こうやって“理想形”を探すためのツールだった。テクノロジーが進化した今でも僕はボーカルレコーディングには2時間半はかけている」(角松)

さらに角松は、「そこそこできる人は多いが、それと“生き残っていくこと”はまったく違う」と話し、「ちょっとできても、それではただのハリボテ。プロとのパラドックスがどこにあるのかを理解するべき」と語った。

「音楽で食っていくためには、どのような価値感で、自分がどのように評価されているのかを理解し、できることと、できないことを知ることが重要」と熱く語っていた。

終始熱を持って、厳しく受講者たちに語りかけた角松は、最後にこの言葉を送り、講座を締めくくった。

『人生に必要なのは、勇気と想像力、それと少しのお金だ』
                ――チャップリン『ライムライト』より



実力派の作家4組による超実践的なコンペバトルで幕を開け、角松敏生のスペシャルプログラムで幕を閉じた『SONIC ACADEMY FES EX 2017』の初日。

こうした現場の生の声が聞ける場は限られているため、来場者の人たちが終始真剣なまなざしでそれぞれの講座を受講していたのが印象的だった。

明日公開予定の2日目のレポートでは、加藤ミリヤのサンプリングを中心とした楽曲制作についての講座、そしてUVERwordのドラマー・真太郎による実演を交えたドラム講座の模様をお届けする。お楽しみに!


『SONIC ACADEMY』のオフィシャルホームページはこちら
*『SONIC ACADEMY』とは?
ソニーミュージックが提案する本格的音楽人養成スクール。オンライン(通信)とリアルな受講方法と学び方も選べる。

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