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ココレポ2017.11.10

「14th TIMM」で世界の音楽シーンを見据えるAnly、ねごと、CHAIのステージをレポート

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世界の音楽市場と日本を結びつける「第14回東京国際ミュージック・マーケット(以下、14th TIMM)」のショウケースライブにソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)所属のAnly、ねごと、CHAIの3アーティストが出演。海外の音楽関係者が多数駆けつける中で行なわれた、そのステージパフォーマンスをレポートする。

 

 

日本の音楽コンテンツを世界に向けて発信するべく開催された大規模なビジネスイベント「14th TIMM」。その一環として、10月23、24、25日の3日間に渡って渋谷TUTAYA O-EASTでは総勢19組のアーティストによるショウケースライブが行なわれた。

 

ソニーミュージックからも、Anly、ねごと、CHAIが参加。大勢の観客はもちろん、世界各国から集まった音楽関係者らの前でパフォーマンスを披露した。海外をも巻き込むほどの勢いあふれる彼女たちのライブパフォーマンスをレポートした。

 

Anlyが見せつけた「アコースティックの力」

 

23日、ショウケースライブ初日のオープニングアクトを飾ったのは、SML内レーベルのソニー・ミュージックレコーズに所属する女性シンガーソングライターAnly。アコースティックギターを武器に、ロックからブルース、ポップスまで歌えるジャンルレスの音楽性を持った沖縄出身のアーティストだ。

 

 

まずは、テレビアニメ『『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のオープニングテーマとしても知られる「カラノココロ」から幕開け。サポートメンバー(ギター、ベース、ドラム)を随えながらも、彼女のアコースティックギターの力強い音色は決して埋もれることなく、むしろステージを支配していき、繊細ながら疾走感あふれる歌声の迫力も会場のすみずみまで響き渡る。

 

曲間でAnlyは、海外の観客・音楽関係者に向けて、流暢な英語であいさつ。沖縄の離島で、音楽に囲まれて育った来歴を語っていた。

 

1曲目が終了すると、ステージからはサポートメンバーが撤収し、Anlyのひとり舞台に。アコースティックからOVATION(エレアコ)に持ち替えた彼女は、イギリスのシンガーであるエド・シーランの「Don’t」をカバー。ポップでありながら骨太なこの曲の空気感を、完全に自らの表現にしていた。

 

さらにそこから、間断なくオリジナルソング「Coffee」へとつなげてゆく。激しいビートと彼女の伸びるハイトーンボイスに、オーディエンスのハンドクラップがどんどん重なっていく。

 

この2曲でAnlyはエド・シーランも多用するループペダルを駆使して、自分自身の歌声とギターを何層にも重ねるテクニックを披露。ソロアクトとは思えない厚みのあるサウンドとなった。

 

 

ラストでは再びギターをアコギに持ち替え、ビートルズの「カム・トゥゲザー」をカバー。この曲はポール・マッカートニーのベースによるリフが有名だが、Anlyはそれをアコースティックギターで表現。激しく弦をスラップし、彼女ならではの「カム・トゥゲザー」を歌いあげていた。

 

「声の力」「生音の力」を遺憾なく発揮し、テクニックの確かさをオーディエンスに強く印象づけたAnly。海外の音楽関係者へのアピールも大成功だったと言えるだろう。

 

 


勢いに乗るガールズバンド、ねごとのダンサブルな音世界

 

同日4組目の登場となったのは、蒼山幸子(Vo.&Key.)、沙田瑞紀(Gt.)、藤咲佑(Ba.)、澤村小夜子(Dr.)で構成されるガールズバンドで、SML内レーベル、キューンミュージック所属のねごと。「空も飛べるはず/ALL RIGHT」の両A面シングルのヒットも記憶に新しい、今、勢いに乗る4人だ。

 

 

はかないリリシズムと、芯の通った力強いサウンドが融合した独特の世界観を持つ彼女たちの1曲目は、それをよく表わしたナンバー「ETERNALBEAT」。

 

繊細で透明感にあふれた蒼山幸子の歌声が、激しいドラムビートと絡み合って会場に染み渡る。エレクトロニカルなポップさで彩られた楽曲は「踊れるねごと」の真価を体現するような楽曲だ。

 

続けざまに、2曲目『DANCER IN THE HANABIRA』へ。甘くけだるげなボーカルと、メロディアスなサウンドが独特の浮遊感を醸し出す。ダンサブルではあるが決してテンションの高さを観客に強要しない、ねごとらしいナンバーだ。

 

3曲目は、ポップ寄りの前2曲とはやや趣向が変わり、ロックテイストが色濃くうかがえる『シグナル』。ドラムのパワフルさが映えるハードなリズムに呼応して、ギターの沙田瑞紀とベースの藤咲佑がステージ狭しと動きまくる。こういうパフォーマンスも兼ね備えているのが、ねごとの自由さであり個性と言えるだろう。

 

 

ラストは、『アシンメトリ』で締めくくり。蒼山幸子によるメロウな歌詞と、素直に踊れるダンサブルなメロディが不思議な出会いを果たした楽曲だ。ここでも沙田瑞紀と藤咲佑は奔放にステージを飛びはね、オーディエンスとの一体感を醸し出していた。

 

ベクトルの異なる4人の個性が化学反応を起こし、多様な側面を見つけることができるねごとワールド。その片鱗が、会場にも充分に伝わるアクトだった。

 

 


コンプレックスはアートなり! NEOかわいいオンナバンドCHAI

 

2日目の24日は、双子のマナ(ボーカル・キーボード担当)、カナ(ボーカル・ギター担当)、とユウキ(ベース担当)、ユナ(ドラム担当)の4人で結成され、「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」をコンセプトに掲げるニュー・エキサイト・オンナバンドCHAIが登場。人々、特に日本人が抱えるコンプレックスを積極的に肯定する、そのぶっ飛んだユニークさは注目の的だ。

 

 

この日のトップ出演となったCHAIは、まず『Sound & Stomach』からパフォーマンスをスタート。音楽への枯渇感と食欲を結びつけたシュールな曲で、某音楽情報サイトの主題歌として勝手に作ったというものだが、マナ・カナのファニーなボイスとメンバーの確かな演奏技術のおかげでただのコミックソングにはなっていない。

 

そんな楽曲が終了したとたん、突然会場に向かって「CHAI’S COMMERCIAL!」を宣言。10月25日リリースされる初のアルバム『PINK』のジャケットを手に、マドンナの「Material Girl」を自分たちの宣伝文句にアレンジしたカバーをステージ上を練り歩きながらさらっと披露する彼女たち。

 

さらに海外の音楽関係者も意識しながら、「Japanese is difficult, But English is more difficult! Do you understand?」とオーディエンスを煽り、「We can speak English!」と決して上手とは言えない発音でMCを行ない会場の笑いを誘った。

 

 

つかみはOKとばかりに、続いて『ボーイズ・セコ・メン』をプレイ。せこい、ずるい、安い男に惑わされるなという女性への警鐘、というかほとんど男子をディスるような内容とは裏腹に、ここでもギター、ベース、キーボード、ドラムそれぞれの安定感あるサウンドがしっかり活きていて、ポップでありながらもロック魂を感じさせるナンバーだ。

 

続いて披露されるのは、まさしくCHAIのコンセプトを象徴する新曲『N.E.O.』。容姿に対するコンプレックスをはねのけ、個性的であることが「NEOかわいい」のだと歌い上げる。アップテンポなメロディに乗せてマシンガンのように放たれるマナ・カナの超音波ボーカルと、ユウキのグルーヴィーなベース、ユナの迫力に満ちたドラムビートが痛快のひと言だ。

 

そして最後には、こちらもコンプレックからの脱却をテーマにした『sayonara complex』で締め括る。これまでのナンバーよりもスローで落ち着いた曲調によるギターリフの心地よさ、「かわいいだけの私じゃつまらない」と歌うマナのキュートなボーカルが、彼女たちの器用さをもうかがわせる。

 

異色という意味では今回のショウケースライブ参加アーティストの中でも飛び抜けた存在のひとつと言えるCHAI。レベルの高い演奏テクニックに裏打ちされた「本気のヘンテコさ」を強く感じるステージだった。

 

 


世界を目指すアーティストたちの確かな手応え

 

世界の音楽マーケットでは、定額で膨大な数の楽曲に気軽にアクセスできるサブスクリプションサービスが成熟期を迎えつつある。つまりそれは、どのアーティストのどの作品でも、新・旧譜関係なくネット経由で海を渡り、国境を越えるチャンスがあるということだ。

 

またマーケティングに関しても、海外ではAIの活用などによるユーザー需要の把握技術が進化を重ね、何がどんなところでヒットするかを解析する「法則」が確立しつつある。ニーズのあるユーザー層に確実に楽曲を届け、またそれに則した新たな才能を発掘・育成する精度は日進月歩で高まっているのだ。

 

だが、そうした海外での流れに、日本の音楽市場はどこまで迫れているだろうか。しだいに日本だけが乗り遅れ、巨大な海外市場の中で埋もれてしまうようなことはないだろうか。そういった危機感に対する答えを模索し、世界に向けたコンテンツ発信を促進する場が、まさに「TIMM」なのである。

 

今回レポートしたAnly、ねごと、CHAIの3組を始め、ショウケースライブに参加したどのアーティストも、海外を見据えたステージに対して極めて自覚的だった。海外のオーディエンスやバイヤーの心のどこに刺されば、世界へと羽ばたくことができるのか。アーティストとしてできること、やりたいことは何か。ステージからは、そんな彼らの「本気」がひしひしと伝わってきた。

 

業界の確かな戦略とアーティストの情熱が一体となれば、日本の音楽は充分世界で戦える。わが国の才能が世界を席巻する確かな予感を、強く心に響かせてくれた今回のショウケースライブであった。

 

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